鹿角のいいこと

恋する鹿角新聞 人気コラム「寿賀婆に聞け!」④

恋する鹿角新聞 人気コラム「寿賀婆に聞け!」④

恋する鹿角新聞で連載中の人気コラム「寿賀婆に聞け!」。取材陣がスナック寿賀を訪れ、御年80歳を過ぎた寿賀婆(本名:浅石シガさん)に話を伺っています。
※寿賀婆についてはこちらもご覧ください。

 

今回のお題「寿賀婆に聞く 昔の鹿角のお話」

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今日の寿賀婆はどんな顔して待っているだろうか。事前に行くことは伝えているから、きっと今か今かと待ってくれているはず。前の取材が押して約束の時間から2分遅れで扉を開けた。
「来た! いつ電話してやるかと思ってだ!」
確かに遅れました…、すみません…。今日もしゃべる気満々だ。
今号のテーマに合わせ、鹿角が鉱山によって栄えていた当時のことを、鹿角の夜を勇猛に生き抜いてきた寿賀婆に聞くことにしていた。
イレギュラーだが真昼間に訪問。しかしスナック寿賀の店内はすっかり夜の雰囲気だ。
「ここの鉱山は一の番、二の番、三の番と交替制で24時間稼働するほど盛り上がってたし、鉱山で働く人とその家族で溢れかえっていたから、安くて腹一杯食べられるホルモンは受け入れられたんだ。あの頃は全国から人がきて、古遠部や小坂には流れ者も多かった」。

鹿角、小坂はやはり鉱山や銅山で人が多く、彼らが息抜きをするために訪れる鹿角の夜の街は大盛況だった。寿賀婆が支店を任されていた〈キャバレーミカド〉もその恩恵を受けていたという。

「大阪の人たちは、言葉が全然違うべ? こっちの人だば『んだが』っていうことを『あー、ほーか』って。んだがら、すぐ頭に血が上る連中は『阿保とはなんだ!』ってスコップもって喧嘩してだ」と、料理をしながら包丁を振りかざして説明するので、内容以上の凄みが…。危ないからやめなさい、と突っ込むとケタケタと笑っている寿賀婆。

「花輪には女性が切り盛りする商店や飲食店が多いのも、男衆はみんな鉱山で働いてたから。女の人がのんびりできるのは正月だけ。正月はたくさん〈けの汁〉作って旦那に与えて嫁は実家さ帰る、これが鹿角の正月だ」。

〈けの汁〉とは、東北の一部で食べる正月の精進料理だ。細かく切った野菜を入れた汁物。普段は鉱山で働き疲れて帰宅する夫の世話に明け暮れた主婦たちが、家を空けても男たちが食べられるように、〈けの汁〉を鍋いっぱいに作る。なんだか、光景が目に浮かぶようだ。普段からイキイキしているが、昔の話を教えてくれる寿賀婆はさらにキレッキレ。でも寿賀婆に聞いた当時の話が一番ストンと胸に落ちた。すごく昔の話のようで、今に繋がっていると思えたからなのかもしれない。

 

秋の葉ワサビと数の子の酒粕和え

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秋の葉ワサビの泥を丁寧に取り除き、刻んで砂糖と酒粕を加えて一晩おく。
さらに砂糖を加えて、バラの数の子を和えた豪華な珍味。ツーンとしたわさびの辛さと酒粕の甘みが最高。
「めんけえ子にしか食わせない」と断言するほど手をかけた逸品。