後生掛温泉 女将 阿部 愛恵さん
開湯以来、名湯治場として親しまれている後生掛温泉の女将を務めている。
大自然の中で、心も体も健康に。
後生掛の魅力を多くの人に知ってほしい。
国道341号線から八幡平アスピーテラインに入り、険しい雪道のカーブをしばらく走ると、白い湯煙がもくもくと立ち上る幻想的な場所に辿り着いた。ここは鹿角市八幡平、焼山東麓の谷間にある創業三百年の名湯「後生掛温泉」。私たち取材陣が訪れたのはちょうど1月の大寒波が過ぎた頃だったが、春夏はきらめく新緑、秋は鮮やかな紅葉と、季節ごとに美しい表情を見せてくれる。
この手つかずの自然に囲まれた一軒宿で女将を務めるのが、阿部愛恵さんだ。
「後生掛温泉では全部で7つの湯が楽しめますが、名物は箱の中に入り首から上を出す『箱蒸し風呂』。後生掛伝統の入浴法で、全身の冷えを取るといわれているんです。美肌効果のある『泥風呂』は女性に好評で、顔に泥をパックのように塗るお客様もいらっしゃいますよ」。
“馬で来て足駄で帰る後生掛”
開湯以来、湯治客にも人気の宿
ここには一般の宿泊客が利用する『旅館部』のほかに、一年中地熱で床が温まっているオンドル部屋を持つ『湯治部』があり、体の不調に悩む人々が治療のために長期間滞在している。
「大自然の中でゆったりと過ごすことで、心も体も癒されます。総合的な癒しを得られることが一番の魅力ですね」。
取材のカメラに照れながら、温泉の魅力を話してくれた阿部さん。女将にしては少し若いようにも見えるが、実は女将を務めてまだ3年だという。母である先代が3年前に病気で倒れ、それまで宿の経理や広報を担当していた阿部さんが急きょ後を継ぐこととなった。
「働く母の姿を小さい頃から見てきましたが、その姿を自分と重ねたことはありませんでした。心の準備ができないまま女将になり、現在に至ります」と苦笑い。最近は経理の仕事を続けながら、お客様のお迎えや見送りまでをこなすようになったという。
「お客様に喜んでいただくことが私の役目」
八幡平の大自然と特徴あるお風呂を堪能しませんか。
「少しずつ、お客様に私のことを覚えていただけるようになりましたが、まだまだ細かい気配りができず勉強中です。将来は母のような立派な女将になりたい…と言いたいところですが、到底かないそうもありません。私の役目は、来てくださったお客様に喜んでいただくこと。昔からのお客様を大事にしながら、新しいお客様を一人でも増やせるよう、後生掛温泉の魅力をどんどん外へ発信していきたいと思っています」。
まだまだ温泉が恋しい季節。八幡平の大自然と特徴あるお風呂、そして女将の笑顔に会いに行ってみませんか。
後生掛温泉
〒018-5141 秋田県鹿角市八幡平熊沢国有林内
TEL.0186-31-2221(旅館部)/0186-31-2222(湯治部)